尽して尽くして、つくしんぼう
「QRコードです?」
ストローが差された、明らかに飲みきれない容量のココナッツ・ジュースを両手に持ちながら答えると、店長は
「それよ。……いや、よう分からんが」
果たして正解なのか不正解なのか良く分からない、もやっとする返事。
「で、だ。仕入れの関係でウチは、レシート溜まるの早いじゃねーか。老眼鏡かけて、スマホぽちぽち弄ってよ? なんたらコード入れてたら見事、特賞がヒットしたって訳よ。しかも、良い事は続くもんでよ? 店開ける訳に行かねぇし、本当はこのチケット、お前とネルちゃんにやろうかと思ってたんだが……。店はな? しばらく前に、えれぇ腕前の色男がバイトで厨房に来てくれたもんだからよ。スケジュール見たら、お前たちの追試とやらが終わる前に……って、大ウソじゃねえか。ふざけんなよ! ……兎に角、期限も切れるってもんでよ……来ちゃった。ぐははははっ♬」
周りの観光客を驚かす高笑いを轟かせたあとで店長は、財布の中からチケットを2枚を取り出して渡してくれた。渡されたチケットは、別の5つ星ホテルのクルーズ・ディナーのチケット。
「これも福引で一緒に貰ったもんだが、なんかよー分からんが使い切れねえほど貰ったし……ネルちゃんに男っぷり見せた、お前に褒美代わりにくれてやる。2人で行って来い」
それから帰国日時やらを話した後で店長は、ツアーのスケジュールが押しているとのことで、奥さんとの待ち合わせ場所へ。
「えれぇ腕前の色男……って、有栖川さんだよな……多分」
「全てに作為しか感じないわ……」
 




