悲報! 水着展開無しのお知らせ!
「お勧めしてはみたのです……しかし、水着を着て……水に入ると言うことが御理解戴けないらしく……『屋敷と同じで湯が出る風呂? ってのがあるじゃねーか。……なんで、この水溜めで、それ使って身体を洗わなきゃいけねえんだ? 今朝も風呂にゃ入ったぜ? なんか……誰か花瓶の花でも落としたのか、花びらが浮かんでやがった。まぁ気にしやしねぇけどな』(気にしろ! 涙を流して有難がって、ダシが取れるまで浸かり続けろ!)。あげくの果てには、水着を身体を洗うために使う垢すりの類と……お考えになられました様でして……三愛水着、リバーシブル・ショルダー・ビキニのノンワイヤーと、ムルーアのスクエア・ネック、ヴィクトリアズ・シークレットのレースアップ・ビキニ白を……当ホテル、オリジナル・ブランドのボディーソープと共にお手に取られて、部屋にお戻りになられました……」
「……………………」
「百千万億様のお屋敷で働く、メイドさん方にも、お勧めしてはみたのですが……」
「ええ……ハイ」
「『……かしこまりました』……と、なにかを全て察した様子で虚ろな目をなされて、唯々諾々と着替えようとなされる始末。流石のわたくしも、そこまで捻じれた趣味は、いたしてはおりません。即座に水着をお勧めするのをお止めして、引き返して参りました……無念……無念に御座います」
俺はこの人が――その秀麗な顔に、ここまでくやしさ滲ませた顔を見せたのを、見たことは無かった。きっと彼は、南の島の日差しの元で、水着に着替えて遊ぶあいつらの姿を思い、大変な苦労を人知れず買って出てくれていたに違いない。
「……有栖川さん」拳を握りしめて俯く彼の肩に手を置いて話かける「ビーチにナンパでも行きますか? 有栖川さんを餌にすれば釣れると思いますし。なんでしたら……ウチのヴィルマの奴のお師匠さん……ぼんきゅっぼん! の超肉食系で、すっごい美人さんでしたし、捕食されに行かれますか? いつもお世話になっている、お礼代わりに……ご案内させていただきますけど……」




