疑惑の眼差しが、とっても痛い
……なんと言うか、場違いなことを考えていることは理解しているが、日本人の俺にはヴィルマの飲むジュースのお花が、気になって仕方無い。
「その花に毒は無いのか?」と言うことが、まずひとつ。次いで「花が生けられた飲み物を口にする」と言うことが――花瓶の水でも飲まされる人を見るかのようで内心、穏やかでは無い。
かと言って、ヴィルマに俺が飲んでいる、何故かこちらではSOHOと、ラベルに書かれているライチが香るDITAベースのカクテルを飲ませる訳にもいかなければ、ネルがボトルで持って来させたジャマイカ・ラムを勧める訳にも行かず……どうでも良いか。
「なにはともあれじゃ!」何事か思ったのか、ヴィルマが勢い良く立ち上がる「約束通り、わしはツガータに電子音させてやるぞ! 遠慮無く何発でもバッチこーいなのじゃ!」
(約束を守ろうとする、その精神は立派だけどね。よぉ~く、辺りを……窺って見て、ご覧?)
「……ほ、ほら。やっぱり……ひそひそひそ」
「……えぇ~っと。食堂の話は……まぁ貴女から聞いたけど……あたしは、その場に居なかったから、なんとも……本当に貴女か、陶片の子の聞き間違いじゃ無いの? リュシル……ひそひそりん」
(あちら、こちらから俺に向けられる、あらぬ嫌疑の眼差しを……)
平穏な暮らしを取り戻して、俺の云われ無き不名誉極まる噂を払いのけるためには――もはや一刻の猶予も無ければ、選択に過ちひとつ認められない。
「それじゃあ! ヴィルマ! 約束通り……身体で払って貰うぞ!!」
「ハイなのじゃ!」
「「 ?! 」」
離れた場所から、俺たちの様子を見守っていた2つの視線が、嫌悪と緊張の入り混じった空気を漂わせる。
席を立った俺はヴィルマの背後に回り込むと
「プールサイドで、ネルを交えての青(ピー!)じゃな! かかって来いなのじゃ!」
この品の無いお口のお子様を、後ろから抱え上げ――プールに向かって、放り上げる様に投げ入れる。




