アンティグアよ! わしは帰って来たのじゃ!! 【Picture】
「メトレス! メトレス・マリア!」
熱帯の陽光眩しい中ーー鮮やかな青、赤、黄、緑、紫、ピンクに塗られた家屋が、モザイク模様の様に建ち並ぶ街。カリブ海の島々の例に洩れず、澄んだ青い海を見下ろす、教会然とした建物の扉を押し開いて、ヴィルマが黒い髪をなびかせ、中へと駆け込む。
勝手知ったる……と言う感じで。
陶片の娘に事前に聞いていたアンティグアの情報は、アメリカやヨーロッパで、人気の観光地と言う話は聞いてはいたけれども。日本の外務省からは何も警告は出ていないにしても、その犯罪発生率は日本の17倍。
海外旅行をした経験も無い俺からすれば、ピンと来ないものの……倍率が二桁越えと言う時点で、警戒するには充分。そんな土地で――例えヴィルマが生まれ育った土地だからと言って、あいつから目を離すのは躊躇われる。
止むを得ず俺も教会に駆け込む。中に入ると礼拝堂奥の右手のドアを開いて、ヴィルマの黒髪が駆けて行くのが見えた。急いであとを追う。
「メトレス・マリア!」先に続く廊下の右手側――並ぶドアのひとつをヴィルマが、激しい勢いで開き、お目当ての人物を見つけたのか声を上げる「ファッ(電子音)しておる場合では、無いのじゃ!」
俺は猛然とダッシュし、今まさに――憤慨しつつ、部屋に足を踏み入れようとしていたヴィルマの入室を阻む様に、彼女を押し留めた。
「ちょーっと! ちょーっとだけ落ち着こうかヴィルマくん!? あっち! あっちに行って……ね? マリアさんが、着替えて来るのを待とうよ? ね?」
――夕方――
ヴィルマがメトレス・マリアの部屋に突撃しようとするのを何度も何度も押し留め、気が付けば空は日が傾き始め――夕焼け小焼け。何時間も待たされ今日は、もう帰ろうかと考え始めた所で、ようやくメトレス・マリアが俺たち2人の元に姿を見せた。
「おっそいのじゃ! 一体、何発(電子音)するまで待たせる気なのじゃ! 今度の相手は、どこのどいつじゃあ!」




