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それぞれの虚ろな関係

 「はい♬ ご主人様、奥様」


 アルパゴンは、俺とネルの傍にやって来て陶片を手渡すと、次いで皆に陶片を配り始める。夫婦湯呑を置いて陶片を開くネルは、いつものように安売りの広告をチェックし始める。


 あちらの時間は進まない訳だから、毎日チェックしたところで、あまり意味は無いハズなのだが――1円すらも無駄にする気は無いらしい。……常日頃から、この財布の紐の硬さを発揮してくれていたなら……どれだけ頼もしいことか。


 ネルの陶片から、母親に甘える声を上げるトキノの嬉しそうな声。


(……今日は俺の陶片にゃ、別の娘が入ってんのか)。


 トキノの説明を聞いて、既に購入に出向いた「お1人様いくつまで」の限定が付く広告を除外しつつ、日用品の購入計画に血眼になっている。彼女の様子から、食堂の皆に視線を移してみれば、受け取った陶片をチェックする者、大して興味も無いのか、それとも他に用事でもあるのか、そそくさと挨拶だけを残して食堂を後にする者と、皆それぞれな様子。


(平和で良いけど……なんだろうね? この屋敷に集まった人間たちの関係って)


 ネルに言わせれば、一言で簡潔に答えるのは分かり切ってはいるが――相も変わらず、それを許容できない俺が居る。敢えて例えるなら……美人が群生するシンビオシス?。

 

 屋敷に住む人間で男は俺一人(悪魔のアルパゴンには性別は無し)。表面的には兎も角、圧倒的に二の次な俺の発言、そして扱い。日々、女性陣オンリーの環境で顔色を窺い、ひっそり慎ましやかにダンゴムシさんのように生活する、この毎日。


(……オカシイ)。


 ダンゴムシの様に慎ましい生活は、むしろ望むところな性分のハズ。なぜ、あの時の様な……かつての安らぎのようなものが、得られないのか。


「……な、な、なんじゃと」


 食堂の皆を呆っと眺め、物思いに浸っていたところ――ヴィルマの震える声。


「……どうした。また好きなアニメの……レアなネタでも転がってたのか?」


「…………」

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