捧げられて辺境伯領
彼女のその言葉を苦笑いを浮かべながらに聞く、仲間たち。そこで、つとアルシェは思い出したように
「……いや、ロザリンドだけは違うな。一人、殿方からの熱烈な申し出を受け続けていたのだったな。そう言えば――」
一人の例外を挙げた。突然、振られた話の内容に慌てるロザリンド。彼女を追求して、痛くも無いに違いない腹をさぐる仲間たちの黄色い声。
その日の、ひたすら姦しい夕食の席。
皆がナイフとフォークを置いた後も、遅い時間まで、誰ひとり席を立って部屋に戻ろうとする者は居なかった。
――数日後――
意外なことに……というか、当然と言えば当然にも思えるが、アルシェノエルとデシレアは、どこかのパーティーで顔を合わせて以来の知己であるらしかった。
アルシェが彼女たちの中でも一番の名家の生まれであることを鑑みれば、デシレアがありと あらゆる国家に影響力を持つ存在であることを思えば――腑に落ちる。
どうやら先日の槍試合、デシレアも有栖川さんと共に、VIP席で観戦していたらしい。
屋敷の外。玄関の先で、貴族の御令嬢の皆は、デシレアの計らい。毎度恒例のお大尽の御捻りというには、あまりに豪華過ぎる御褒美。
彼女が、自らの力を振るって新調したミスリル特有の輝きを放つ、真新しい全身鎧と盾の軽さと、そのデザイン。
そしてスコラスチカの糸をベースに、不燃素材と衝撃吸収ゲルを合わせて作り出したと言う――鎧下と言うよりは、ライダースーツか、アンダースーツと言った感じの身体の線に合った服の動き易さ、着心地に浮かれた声を上げていた。
「凄い……この甲冑。前の甲冑よりも厚いのに、背中の切り欠きも無いのに……。軽い……。おまけに槍置きは、邪魔にならない様に背中に折り畳めるし……盾は手に持たなくても肘に取り付けられるって……それに、この高さの分厚い前襟……えっ?! と、取り外せるの!?」
(リアルで、テレビ・ショッピングの反応を見せてくれるとは……こいつ、できる)




