へばりつく俺
――後日――
「……ちょっと」
「ふっすぅ……ふすぅ~……」
「動きにくいんだけど」
「ふすぅ……俺は、お前に甘える権利を行使する……ふっすぅ~」
「あぁぁ……もう。なんでアンタって奴は……」
いかついオークの道案内で、身の安全も保障されないまま森を歩く、心細さと恐ろしさを味わった俺は──その後、しばらくの間、牡蠣の如く、ネルにひっついて回るようになっていた。
そして恐怖を忘れるため、不安から逃れるためから、夜にはネルの睡眠を妨げるほど、何度も、何度も、その胸に顔をうずめて、幼児退行したかの様に、おっぱいを求めていた……らしい。そして、当然の如く。鏡に映る俺の容姿は、再び10代のそれに戻ってしまっていた。元の木阿弥。
「──確かに、一緒に暮らしていて……、ほったらかしにされたことに対して……腹を立てたこともありました……」
背後からガッチリ、腰に腕を回され俺にしがみつかれたネルが──背中に顔をうずめられ、前かがみのしんどそうな体勢のまま呟く。
「ふっすぅ……もう絶対に……そんなことしないよ……ネル。すこ~っ」
「だからって、極端過ぎるでしょ! どーしてアンタは、簡単に左から右に針が振り切れるのよ?! 真ん中は無いの!? 真ん中は?!」
「ナイね!(断言) ふすぅ~っ……」
「あぁぁ……もう、背中が蒸れる、べたべたする……」
「オマエ、イツモ……トテモ、イイニオイ……オレ、スゴク落チ着ク……シアワセ」
「分かったから! イイ加減、離れなさいよ! 洗濯物が溜まってんのよ! そもそも、森で会ったオークさんは、親切に道案内してくれただけなんでしょ!?」
「……オ、オ、オ、オーク?(ガクガクガクガク)」
「……あぁ……ハイハイ。ゴメンねぇ? コワイコワイだったわねぇ? ここには、オークさん居ないからねぇ~? 大丈夫だからねぇ?」
「ぴゃろ§#@☆! テロテ‰*!! &$€ッツぱぁあ!! オアァ……」
「あぁ……もぉ、あぁ……もぉ。どうすれば良いのよ……本当にもう……」




