そして、ネルの思惑通り
ネルかアルパゴンが門を操作したのか――俺が、その言葉をかけたのと、ほぼ同時に彼女たちの姿は、消えて行く。
「さ♪ 忙しい忙しい♬ アルパゴン!! あんたも手伝いなさい! お客様が帰った後で洗濯物やら大変なんだから!」
……俺に仕えている「ハズ」の悪魔を、我が物顔で使い倒す構えのネル――彼女は、貴族の娘たちを見送った後、俺が声をかける間も無く、腕捲りしながら立ち去って行った。
* * *
――3日後――
「お帰りなさぁ~い♪ アタシ待ってたぁ~♡」
「……よろしく、お願いします。大奥様」
「……………………」
ネルが先日見せた物静かさ。それの理由は……これ、らしい。
「ツモイs……旦那様……不束者ですが……よしなに……」
先日見せた、悪魔を意匠した黒の甲冑姿から、貴族の令嬢然としたドレスに身を包んだゼルビネットの優雅な挨拶……俺は言葉を無くしていた。
応接室の扉を叩く音。アルパゴンは入室するなり来客を伝える。
「アルシェノエル・フィオレンツァ・バルテルス・ガルムステッッド公爵家令嬢様、ロザリンド・メシュヴィッツ・アッペルバリ伯爵家令嬢様、御着きになられまして御座います。残りの4名のお嬢様方も、じきに御到着なされるものかと存じます」
意味が分からなかった。彼女たち、ひとりひとりが……まごうこと無き貴族の御令嬢と耳にしていたの……だが?。
「ゼルびぃ?」屋敷に一番に戻り、部屋に挨拶に来た彼女に声をかける。
「ゼ……ゼルびぃ……」驚いた表情で固まる彼女。馴れ馴れし過ぎたかと早々に謝ろうとした所、彼女は少し嬉しそうな声で「か……かわいい……」
俺が取ってつけた愛称を、いたくお気に召して下さった御様子。なんだかペースを乱される子だ。気を取り直して、疑問以外のなにものでも無いことについて、……というよりも、粗方ネルに言いくるめられたのは予想はついている……が、コイツにどんなことを言われたのかを確認せざるを得まい「……君たちってば、ネルに……なにを言われた?」




