お帰りのお土産には、我が家自慢のチーズの詰め合わせを
2頭に交互にチーズの欠片を与える俺。この分なら、充分期待できる仕上がりに違いない。
「ちゃりん」突然、耳に入る軽い金属音。そちらを窺うと、先ほどまで、はち切れさせんばかりだった――身に着けた首輪や腕輪を、幾分もダボつかせた小太郎と花さん。
心なしか、少し毛並みも良くなった……様な? 若干……身体も小さく、おなりになられた……様な?。
相変わらず2頭が、欲しがり続ける――手にしたチーズに視線を落とす。
(ネルのおっぱい……そのまんまじゃねーか……コレ)
むしろ固形化したお陰で、その効果が倍増した様にも……思えなくも無い。
「花さん……小太郎……。もうチーズはおしまい。当分、あげない。あげられない」
非難めいた鳴き声を、くぅ~くぅ~……と、上げる2頭。チーズを隠すように布に包み、畳んだナイフと一緒にポケットに突っ込む。
しばらくの間、物欲しそうにねだって見せていた2頭は、俺の様子から無駄と判断したのか――。
『……ちっ、相変わらずネルのつがいは……しけた野郎だぜ』
そんな心の声が、聞こえてきそうな表情を浮かべ、どこかへと立ち去って行く(……最初に味見しなくて、本当に良かった)
手を洗いに向かい、小屋へと戻って、国へ帰るデズデモーナたちの手土産に、アレコレとチーズを見繕って包んでいると、外で馬の蹄の音と鼻息を鳴らす音が聞こえてくる。
包みをそれぞれ、デパートの紙袋にまとめて小屋を出ると「アンタ! 遅いわよ!」
ネルからかけられた御尤もな一声。返す言葉も御座いません。
帰り支度を済ませた彼女たちに、紙袋を手渡して、お別れの挨拶。
彼女たちの馬の鞍には――我が家の備蓄のトイレット・ペーパー24ロールと、石鹸とシャンプーなどが入れられたビニール袋(……分かる分かる)。
「……お陰で、この辺り一帯……ネルのせいで、騒々しいことにならずに済んだわ。ありがとな?」




