長い年月を経て生み出された品種
百合の紋を甲冑の随所にあしらうブロンドの少女の言葉が、その場に駆け寄った彼女たちの共通の感想らしい。
「お気に召して頂けたか?」後ろから、青鹿毛を寄せて、声をかける。
「……こいつらは、この馬体の品種の中でも選り抜きの名馬たちだった奴らだ。デズデモーナは、今俺が乗ってる馬を……って言ってたけど」
話ながら馬場の馬の一頭のに目をやると――目が合った馬は俺を見て馬鹿にしたように歯を剥いて、嘶いた(……馬刺しにして、食っちゃろうか)
「多分……君らの競技には圧倒的な斥量を持つ、こいつらの方が向いてると思うけど……どうだろ?。まぁ、乗ってみるのは明日にして……とりあえず」
落ちて行く日に手をかざし見て――皆を屋敷に招待することにした。
* * *
――2週間が経った――
デズデモーナたちが、やって来たその日の内に、アラーニェのスコラスチカと顔を合わせてしまい、その異形を目の当たりにし、大騒ぎになったことや――。
メルトゥイユが悪魔を模したグロテスク・アーマーの彼女に、外套のフードから顔を見せた瞬間、本人だと看破されてしまったこと。
屋敷の片隅に建てられた礼拝堂で、そのメルトゥイユに泣きつき――よしよしされながら慰められる、女神アレクサンドラの姿を何人かが直接目にしたこと。
そしてネルが、彼女たちの信仰の敵と定められる竜そのもの……であるということが、一気にバレてしまい、騒動が巻き起こったこと以外には、なんの問題も無く日々が過ぎていた。
いや、まぁ……
「なんの問題も無く」では無く……問題ばかりが、噴出し続けた……しょーもない漫才めいた、毎日とも言わないでもない。




