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吝かでも無いのだけれど

 自身のジョッキを手に持ち、メルトゥイユは、そそくさと逃げる様に、俺の隣に席を移してーー顔を伏せる。


「……え~っと、ご丁寧に、お名乗りは頂いたけど……取り敢えず、なんてお呼びすればいいのかな?」


 目の前の席に掛けた伯爵令嬢に「不作法でごめんね?」と詫びると、彼女は思いの他、気取った様子も見せずに「デズデモーナで、結構ですよ♬」と微笑む。


 給仕の娘が運んで来た陶製の杯に注がれた白ワインを受け取るなりーー彼女は、喉でも乾いていたのか、それをすぐにあおる。


「んん! お……美味しい。侮れないわね……プレァリア」


 ワインを口にして目を白黒させ、素直な感想を漏らす。その裏表の無さそうな様子から(悪い娘ではなさそう)だと、俺は思い始めていた。


 こちらの視線に気づいたのか、彼女は話を再開。


「『足が』と仰っていましたけど、……では御自宅まで御送りすれば、売って頂くことも(やぶさ)かでは無い……そう言うことでしょうか?」


「……そんな丁寧に話してくれなくてもいいよ」


 居心地の悪さを感じて、くだけた話し方を要求すると、意外にも彼女はーー


「良かったぁ~♪ お行儀良くって、苦手で苦手で……」


 素直過ぎる反応に、顔がほころぶものを感じる。……が、同時に俺は頭を悩ませる。


 別に馬を譲ってくれというのは、そこまで問題じゃあない。……少し、寂しくはあるけれど。問題はアイツだ――ネルだ。


 きっと、彼女をウチに招待するや、いつもの如く「ハーレム! ハーレム! ハーレムぅ!?」……てな具合で、


 ぴーちくぱーちく♪ ぴーちくぱーちく♬ (さえず)り始めるのが目に見えてる。


(それが凄く……面倒臭い)。


「……えーっと、ダメ?」


 考え込む俺の様子に――彼女は雲行きを危ぶむ表情。


「……正直、それには。他にも瑣末過ぎる問題もあってね」彼女に即断ができない理由を匂わせ「取り敢えず……あの馬が、必要な理由を聞かせてくれたりは、しないかな?」


 彼女の話を聞いてから判断することに。

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