どうしてそれが?
隠し持って来た、携帯調味料入れのキャップを外して醤油を落とす。多少、好みの味には近づいたが――なんだかバランスが崩れた気がする。仕方なく、別の調味料入れから、胡椒を取り出して振る。
ようやく満足できる味に。
メルトゥイユと2人、明るい内から酒を飲み、運ばれて来た料理に、次々と手を伸ばしていたところ。
まだ、客の入りも少ない店の中に、10代後半と見える少女が足を踏み入れる。
身長は160センチ後半、仕立ての良い……この世界では珍しい、幾分マニッシュな装い。
艶のある栗色の髪に青い瞳の彼女は、店に入るや――きょろきょろと客の顔を見回し、
こちらに目にするなり、真っすぐに歩いて来る。
「初めまして」白い磁器を思わせる肌。顔には、見る者を和ませる様な笑顔を浮かべて、彼女は俺に挨拶した。初めて見る少女。
向かい合って飲んでいたメルトゥイユが彼女を一瞥した後、すぐに背を向けて俯いて――警戒した空気を漂わす。まぁ、そうなるだろう。
「初めまして」彼女からの挨拶を鸚鵡返し「……えっと、なにか御用で?」
目障りな俺たちを教会が暗殺しようと考えないとも限らない。俺も警戒は絶やさず、表情は気取られないように努めて――指輪から、回転拳銃を呼び出す心構えだけは、しておくことにした。
(……こんな娘、間違っても撃ちたく無いィィィ~っ!!)
俺たち2人の空気を察してか、彼女は慌てたように――
「あ、あっ! 突然、ごめんなさい!」謝罪の言葉を口にして、俺たちに声をかけた訳についてを口にした。
「厩舎の青鹿毛の2頭、貴方のものですよね? あの子たちを私に売って下さい」




