イイ子にしときますよ?
「さ、参加なされるとか……仰いませんよ……ね?」
彼が、世の終わりと言った感じの青い顔を見せる。
自身が属する宗派の、信仰の危機そのものな俺たちが大手を振って、それに参加でもするとなれば――彼の青褪めようも理解できなくは無い。
「あ、いやいや。そうじゃなくて。ご迷惑をおかけしない様に、大人しくしているつもりですよ? 騒々しいのとか嫌いですし。問題が起きるのも嫌ですから、お話を伺っておきたいなぁ~って、ですね? 思った訳です。ハイ」
下手にまわる俺の態度に目の前の彼はーー幾分、拍子抜けした表情。
俺にしたって、こんな異世界にまでやって来て……別に好き好んで、善良な方々の信仰の敵に、成りたくて成った訳ではない。360度、全方位を敵に回す様な真似は、少なくとも俺には、するつもりは無い。
(トラブルを回避するためには、頭ぺこぺこ……の、一手っ!)
ホッと、安堵したような溜息をひとつつくと、彼は――今回、プレァリアの街で開かれることになった、槍試合とやらについての話を聞かせてくれた。
* * *
彼の話を聞き終え――教会をあとにする俺の足取りは重かった。
馬を引き取ると、スキュデリと待ち合わせ場所にと、あらかじめ決めて置いた、教会から離れた区画にある宿の並ぶ通りへ。
馬を預けていると、人目に付かないように部屋で着替えて来るという、メルトゥイユを宿に残し、ギアネリから聞いておいた料理が旨いと言う酒場で2人を待つ。
最初にやって来たのはメルトゥイユ。ネルが普段着るような感じの服に着替えてはいたが、胴を締め上げる様なボディスを身に着け、修道衣を脱いだ彼女は、トレード・マークのコイル状に縦に巻いた黒髪と、白い肌の対比が艶やかで美しかった。




