日陰者が、板について来た
「教会側も……危惧し続けては、いるんですよね。大会の前後には騎士による徴発を名目とした略奪や、狼藉も多々、起こると報告もありますし……」
メルトゥイユの言葉に、ネルは言葉を尖らせる「あの役立たずの女神に、少しは仕事させなさいよ」
困った表情を浮かべ、申し訳無さそうに、肩を竦ませる修道女(……なんかゴメンよ)
これ以上、ネルのメルトゥイユいびりが、激しくなる前に話を打ち切らせるべく「まぁ……なんにせよ、少し注意するようにしておこうか……」皆に、そう伝えたあとで――裏を取るべく、明日にでも街に向かってみようと、メルトゥイユとスキュデリに同行を頼むことにした。
* * *
比較的、人の出入りが少ない通用口を使って街に入る。街の門番とは、以前に話がついているのか――審査ひとつ無く、中に入ることが出来た。
目深に外套のフードを被るメルトゥイユの馬の手綱を取ってギルドへと向かう。
――同行を頼んだスキュデリには、プレゼント用にあちらで購入したスコラスチカの友人に手渡す、服を届けに行って貰った。
ギルドは、やはり大変な人の入りでごった返していた。近くの宿で馬を預け、勝手口から教会の中へ。扉を開けようとすると、派遣されてやって来たという男性、ヴァシレフ・シュドビルさん……とか言ったか? に出迎えられる。
「人目につかない様には……して頂けましたね?」
戦々恐々といった感じ。応接室に通され用件を訊ねられる。教会側の人間からすれば、一刻たりとて俺たちと同席したく無いに違いない。
応対を任された彼に対して、なんだか憐れなものを感じた俺は、さっさと用件を片付け退散しようと考えた。
「なんだか近々、槍試合? とかいうものが催されるとか聞いたもので……。ご迷惑をおかけすることにでもなれば、どうかとも思った次第で……それが、どの様なものかをお聞きしたくてですね」




