森に住む住人
森に入った俺は、足元に注意を払い、視点を高く上げて、周囲の木々を確認。
まとまった量の乾いた薪が、一気に手に入る上に、切り出す労力も少なく済む、立ち枯れの木を探すためだったが……そう都合良くは、見つからない。
我が家を中心として拡がるネルの『領域』内では、木が立ち枯れると言うことは、起こらないため、いつも遠くまで足を運ぶことになった。
最初の頃は、地権者とのトラブルを気にしたものだったが、ネルが言うには──この辺り一帯が、この地の有力者を通じて、彼女のために捧げられた土地であるらしい。
人が踏み入ることは滅多に無い土地であるとのこと。
かなりの時間、森を歩き回ったが──やはり、お目当ての木は見つからない。
こうなればネルにひとつ、俺の格好のイイところ(土下座)でもバシっ! と、見せつけて、家のドアを開けさせてやろうと、そう思っていた矢先……。
重たい何かを地面に放ったような「どさっ」っと言う音が、背後で響いた。
振り返ると、そこには――身長2m以上はありそうな、先の尖った短い耳に、暗緑色の肌、下顎からは鋭い2本の犬歯を覗かせるオークが、こちらをじ~っと見つめて立っていた。
全身に体毛らしきものは無く、顔には眉も無い。
おかげでシックス・パックに割れた腹筋と併せて、そのいかつい雰囲気には拍車がかかっていた。
(……実際に居るのは聞いてはいたけど。出会っちまったよぉ)
せいぜい人並み程度ではあったが、現代っ子の嗜みとして、ゲームで遊んだ経験くらいはあったし、サブカル系のサイトを開いた時に得た知識で、それがどのような存在なのかは知っていた。
──兎に角、ヤバイ奴だ。
腕っ節に、まるで覚えの無い俺のこと。
この場を、どう安全に切り抜けようかと、必死に考えを巡らせていると、オークの方から声。この時、心底オークの言葉を勉強していて良かったと思ったのは、言うまでもない。
もし宜しければ お読み下さった御感想等を
戴けましたら、大変有難く存じます。
その他にもブックマークや、このあとがきの
下の方にあります☆でのポイントに代えて、
御評価戴いても それを元に参考にさせて
貰いますので、何卒宜しく
お願い申し上げます。
m(__)m




