まあね? 俺の生まれた所でも、鎌倉武士くらいの頃まではね……
「…………」
まるで辻斬りでもして来るとでも、云わんかのような――物騒なセリフ。それを声高に叫び、自分の生まれ育った村へと走る、彼女の後ろ姿を見送って眺め……。
「あぁ……行って……らっしゃい」
見事な肩透かしを受け脱力した俺は……弄ばれて打ち棄てられた女性さながらの佇まいを浮かべ、抑揚も無く。……彼女を送り出していた。
* * *
ぐったりとして、その場に座り込む俺――。
「大丈夫か? 御屋形様よ」心配してくれたクィンヒルデが顔を覗き込む。彼女の金髪が、それに合わせて流れ、現世から持ち込んだシャンプーの香りが漂う。
「……でも、御屋形様? よろしかったのですか?」スキュデリが言いたいことは想像がついた「……あ、あぁ。あの魔剣のこと? 良いよ別に」
「私のウーラガンドにも、劣らぬ剣に見受けられたが……」少し羨ましそうな色が、クィンヒルデの話口調から見え隠れしていた。
「良いんだよ。そもそも俺、武器とかさ? 興味無いんだわ」
顔を見合わせる2人。どうして? と、いった――理解に頭を悩ませる顔。
「武力」という物が、財産などと等価で価値あるものとされるのは、文明や文化の発達する過渡期の中では重んじられることも、理解出来ないでは無かったが……残念にも俺が生まれ育った現代の日本では、何の価値も無い。
ちょっと、街に出れば――面白可笑しく遊べることは、山ほどある環境に囲まれて、わざわざ痛いことなんてする必要も無い。意味も分からない。
プライド、ポリシー? そんなもの無くても、平気で生きていける素敵世界。武器なんてものに、興味持つ必要がある環境とも縁の無かった俺からすれば、魔剣をウルリーカに与えたところで、さして惜しいとも思えなかった。
「では……御屋形様が……御興味をお示しになられるものというのは……どのようなものでしょうか?」
スキュデリからの問いかけに、俺は言葉に窮していた――。
「興味あること?」考えを巡らす(趣味的なこと? なんだ?)




