さぁ♪ 存分に過ちを犯しましょう!
彼女たちに支払う、賃金を考えると震えたが……アルパゴンは耳打ちで、
「……大丈夫です。彼女たちは、それはそれは……もぉ~っ言葉に言い表せない様な、崖っぷちの人生を送る予定だった者たちばかりです。いえ、ね? 私、悪魔ですし? そういう人の不幸を嗅ぎつける嗅覚には、自信が御座います。その様な訳でして、窮地に手を差し伸べて、そっと居場所を用意してやることで……。1人当たり、半年で銀貨6枚という、格安での労働契約を結ぶことに成功しております」
「こ、この悪魔め……」
「お褒めに預かり、光栄でっす♬」
聞きたくなかった彼女たちの背景情報。聞いてしまったが最後。この悪魔を追い出そうと、彼女たちは簡単に追い出す訳にも行きそうにもない。
「ちなみに、これは彼女たちには……まぁ無断で行いましたが? 記憶を覗いた結果、聖鈴教会などと、なんら関係も無い娘たちを選んで連れて参りました。そして、お目になされましても、不快になられない程度には――それなり~に? 見目の整った者たちを、集めて参りましたつもりで御座います」
アルパゴンに指示を受け、それぞれの仕事をこなすべく、散って行く彼女たち。目の届く範囲では、1人が視界に入るだけ。けれども――確かに。
一生懸命に屋敷の清掃に精を出す、その彼女の容姿は、可憐と表わすのが、相応しいほど整って見える。
「……因みに……で御座います。奥様は、彼女たちが屋敷で住み込みで働くのを、大変、お喜びの様でした。なんでも『お手付きの機会が増えれば!』っと、御主人様が間違いを犯されますのを、それはそれはもう……楽しみになされておられます様で。私といたしましても……人が過ちを犯すさまを目にするのは楽しみで楽しみで……仕方がありません」(……お前ら)




