漢の生き様、見せちゃるゼ
「その間……アンタは……つがいをどーしてたの?」
「……え~っと。片時も離れず……そばに……居た……よ?」
その言葉を耳にするなり──ネルはニコっと、ひとつ。愛想の良い抜群の笑顔を浮かべ、脱兎の勢いで家に飛び込むと
「しばらく、帰って来んな!」
大きな音を立てて勢い良く、俺を家から閉め出した。
「ちょ!? ちょ待て! 花さんか小太郎に襲われたら、どーすりゃあイイんだよ!」
* * *
「ネル~?」
「…………」
「お家に入れて欲しいなぁ~?」
「…………」
「お腹減ったなぁ~。ネルさんの美味しい、ごはんが食べたいなぁ」
「畑のお野菜さんたちでも、齧ってなさい」
「それにアレアレぇ? なんだか疲れて……眠たくなってきたぞぉ~? ベッドで、イイ匂いがするネルさんに、優しくポンポンして貰って、お寝んネしたいなぁ~」
「…………」
「ネル~?」(ダメだ。取り付く島も、ありゃしねぇ……)
家から閉め出された俺は──全てのプライドをかなぐり棄てて、御機嫌を取るために全身全霊で、猫ナデ声。
なんと言う漢の鑑か!
……が、どうやら諦めるしか無さそうな空気。観念した俺は──小屋の裏手に回り、暇つぶしを兼ねて珍しく、薪割りに手を出す。
(ま、当然だよなぁ……。ネルにしてみれば200年も、俺の死を悲しんでくれていたらしい訳で……。そんで生まれ変わった俺をようやく見つけ出して、また つがってみれば、ほったらかされて10年近くも放置。そりゃキレもするわぁ……俺って、こんなダメ男だったか?)
考えごとに頭の容量を割いての単純作業は捗る捗る。
気がついた頃には、割る薪は全て無くなっていた。
(御機嫌取りには足り無さそうだけど、焚き木でも探しに行くか……)
少なくなっていた薪のストックを確認した俺は、薪割り斧を担いで、森の中に分け入ることにした。




