シムシティかな?
ネルに急かされるままに、封筒の口にナイフを差し入れ、開封する。
中に入っていたものは、なにかの納品書のリスト。
「……なんだこれ?」
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[アブサン 89度/200本]
[芋焼酎 悪魔の抱擁 25度/200本]
[カッシェロ・デル・ディアブロ 13.5度/赤200本、白200本、ロゼ200本]
[ガブガブくん/60本]
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[バカラ:ポンタルリエ・グラス/30脚]
[バカラ:アブサン用ウォーター・ドリップ(ファウンテン型)/3脚]
[アブサン・スプーン(シルバー):アンティーク(1921年)/60本]
[黒薩摩:黒千代香(酒器 銚子)/24提げ]
[黒薩摩:そらきゅう(酒器 猪口)/36口]
[バカラ:ワイングラス・アルクール、オノロジー、デギュスタシオン、シャトー、ジュピター]/各コレクション30脚ずつ
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「…………」
ネルを狙い撃ちにする賄賂品のリスト。これに目を通すや、ネルのアルパゴンに対する評価は180度ねじ曲がり、先ほどの茶番劇の結果も、それに倣って――即、覆ってしまっていた。
「ボンボンなだけの悪魔かと思えば、それなりにやるじゃない♪」
* * *
魔術師の娘たちが、師匠である魔女のばーさんと共に過ごした家。
さらにはアルパゴンが、配下を酷使して建築した歌劇場。
それらはデシレアによって『門』を用いて、ネルの領域に丸ごと移され、まるで元から在ったかのような佇まいを見せていた。
そして、ことあるごとに噴出するネルの不満を――その都度、鼻薬を効かせることで沈静化させるアルパゴンの見事な手腕によって我が家は、徐々に清雅な屋敷へと色を染め変えられつつあった。




