かえるの歌が
「特別、なにかのイベントごとだって訳でも無いのに前から無差別にハイタッチしてくる女の子が――なぜか俺の前で、スッとハイタッチを終わらせた話とか?」
「『世間一般の認識として最近の大学では、最前列に座る学生は熱心な学生と言う訳ではなく、友達が居ない学生なのだと言うこと……を知りました。……僕、ちょっとがっかりしています』ってよ? 講義の前に勝手にがっかりしたって、のたまう教授のお陰で? 別にボッチでもねぇのにボッチ呼ばわりされて、コンパの席で『可哀想……可哀想ぅ~?!』って、それを酔った女の子に号泣されて? コンパの空気白けさせて、それが俺のせいにされた話とか?」
「どんなのが良い? 色々あるけれど」
ひとつ、話を思い出すと――芋蔓式に記憶が呼び起こされる。
波に乗り始めていた。乗りたいとも思えない、自虐の大津波に。
「……す、素晴らしい」
悪魔は口元を手で押さえて――身を戦慄かせ
「……あ、貴方こそは……私が求めていた人間だ。尽きぬ大いなる興味と好感の元、そして私が思い描く、劇を完成させるために……是非、私を貴方の側においては貰えないだろうか! 仕えても良い! 何者かに仕えたことなど無い私だが! たまには良いかも知れない。きっと、それも良き着想と視点を得る一助となろう!」
悪魔は熱に浮かされた風に舞い上がっていた。
「……いや、それはいいから。折角、思い出したんだ。聞いてくれよ。色々とさ?」
* * *
「うぅ……か、かわいそう……話の所々……分からないけれど……かわいそう……」
「ひ、ひっぐ! えぐっ! えうぅ……きもいぃ……きもいぃ……でも、可哀想うぅ」
「地下で……きっと、埃が多いせいね……なんだか単眼が、ゴロゴロするわ」
「お、御屋形さま……」
「……な、なんや自分、えらい可哀想な奴……やったんやな」
「あ、悪魔め……悪魔めぇ! ツモイさんの……心の傷を暴き立てるなんて」
 




