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おっぱいで人生を踏み外したバカな男の話を聞かないか?  作者: ……くくく、えっ?
十一章:魔術師の娘たち

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理解し難い、頼みごと

「私の自慢の劇場に対して、その様な表情を頂けますとは……感激の極みです」


 悪魔は、なにやら嬉しそうに。


 しかし、そんな振りまく空気を突然翳らせ――ぽつりぽつりと、慙愧の念に堪えないと云わんばかりの様子で語り始めた。


「ふと思い返してみれば……いや気づいてみれば。……私、人間の言う『悲しい』という感情を理解できないのです……これは、劇を作ろうというにあたって、考えてみるまでもなく――致命的です。塩味がしない料理の様なものです。カタルシスを、どう表現しようかと考えるにあたって、かなりの頻度で大きな問題となり得ます」


(そんなものなのか?)


 彼が悪魔であることを考えれば、人間の俺とは……価値観も感性も違うのだろうし、

そういうものだと言われてしまえば、それまでだったが――。


(笑える劇でも……いいじゃない?)


「……私の愚かしさを笑って下さい。せめてもの慰めに」


 俺の考えを読んだのかは分からなかったが……悪魔は、そんなことをポツりと。


「ひとつ……頼みを聞いては頂けないでしょうか」 


「なんなりと……とは、言えないけれど……なんでしょう?」


 不穏な匂いしかしない申し出ではあったが――この悪魔にしてみれば、こちらは不法侵入者。聞くだけは聞いてやろうと耳を貸すことにした。


「な、なりません! 悪魔の言葉に耳を傾けてはなりません!?」


 うしろでスキュデリたちに取り押さえられているメルトゥイユより、制止の声が飛ぶ。その声をまるで煽るかのように――後ろを振り返り見て、にこやかに手を振る悪魔。


「……で、なんです? ウチの者が騒々しくて申し訳無いですけども」

「お気になさらないで下さい。咳きひとつ聞こえない劇場の寂しさを思えば……彼女の あのような声も好ましく思えます」 

 

 悪魔は、穏やかな表情。そして彼は俺に――こう、頼み事を切り出した。


「人間の貴方の、悲しかった記憶を私に譲っていただきたい」

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