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地の底で悪魔と

「……お客さま? ……かな?」


 長身痩躯を仕立ての良さそうな服に身を包んだ――観劇にやって来たかのような、いで立ちの男。眉目秀麗な顔立ちの、色の白い東洋人に見えた。


 男は立ち上がって、俺たちの前に進み出て来ると恭しく一礼する。


「悪魔である、私の劇場にお越し下さるとは……恐縮でございます。名乗らぬ不作法は平にご容赦を……私たちにとって名は、自身の存在以上に大事なもので御座いますれば……」


 澱むことなく、流暢な共通語を用いて、悪魔は挨拶の言葉を述べる。


「あ、悪魔?!」言うが早いか――こちらの側より、メルトゥイユが先んじて前に進み出て、鎚矛と盾を構える。


 失望の色を浮かべる悪魔を名乗る男。

 そちらを見るでもなく、メルトゥイユを取り押さえるように指示する俺。


 スキュデリたちに押さえつけられ、メルトゥイユは必死の抵抗で暴れている様子だったが――彼女の様子を気にすることなく、その男に話しかけた。


「いきなり押しかけたやら……騒々しいやらで……ホント申し訳ない」

「ほう?」


 男は俺の出方が、意外だったのか――興味を示すかのような声を上げた。


「遺跡だと思ったから、地上にあった入り口から、入り込んじゃったんだけど……」

「遺跡……ですと?」


 男は俺の言葉に驚いた様子で――ポケットから懐中時計を取り出すと、蓋を開いて時間を確認し溜息を漏らす。


「なんとまぁ……気が付けば1103年も時間が経っている。趣味にかまけると……時が経つのも早いものですな……。いかんいかん。配下の者たちに……なんと言い訳をしたらよいものか……」


「そんなに長い間、こちらで……なにをなさっていたんで?」


 興味を持ったから――という訳では無く、この悪魔を名乗る男が何者かを知るために、しばらく話をしてみることにした。


 ひょっとすると、ただ単にアレな人なだけで。この遺跡の側に住んで居る地元住民が、ここに入り込み悪魔を騙っているだけも知れない訳で……。

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