あ、あの子を怒らせると、本当に恐ろしいから……仕方ないの
息巻く、オーク3人は頼もしくはあったが……。彼女たち3人が、喜び切る前に注意することに。
「盛り上がっておられる最中に悪いけど……ウルリーカ? なんらかの危険と出くわしたら、基本は全力で引くことにするぞ」
――かったるい、まどろっこしい、たるい。
想像した通りの文句が即、噴出。それに対して「だから森の中で、お前は俺にやられたんだ」と返すや、すぐにバツの悪そうな表情を浮かべて静かになった。
(……これは良い。しばらくは、なにかを言い始めるたびに……これで黙らせるようにしよう)。
「はじめから逃げ腰じゃねぇか……」と、不満たらたらに、なおもウルリーカは、漏らしていたが――それもすぐに静かに。
「ところで……御屋形様? もののぐは……それだけですか?」
ツォンカパに貰った剣一振りを、剣帯に提げただけの軽装の俺を見て、スキュデリが心配そうな表情。
「……いや。今日は、完全武装だよ? この間……デシレアに超怒られちゃってさ。屋敷に置いてた俺のもののぐは全部、指輪に突っ込んで来た。わりと今、自分が……ちょっと怖い。あと、あの子……怒らすと超怖い……女王様っぷりがヤバい」
デシレアが、こさえた武具が――そこいらにある代物と同じ程度の物な訳が無い。使うことにでもなれば一体、どうなることか……。
遺跡に到着するなり、メルトゥイユは辺りを落ち着きなく、きょろきょろと見回して終始――なにかを考えている様子。
「メルトゥイユ?」少し気になって声をかけると、彼女は浮かない表情。
「先日、アレクサンドラ様が御降臨なされたのですが……。夢で何かを仰っておられたのですよね……」
聞かなきゃ良かったと、後悔することを呟いた後で
「あ! お気になさらないで下さい!」
不穏の空気を払いのけるように――両手をバタつかせ、聖衣の下に着込んだ鎖帷子を しゃらしゃらと鳴らす。




