語学の天才たち
「こんなの半年くらいで覚えちゃったわよね……なんで訳が付いてるのかしら……所々、間違えてるし……」
「……わたし……2ヶ月……くらい……で、覚えた……」
「……はっ?」
思わず口をついた俺の声に――彼女らは皆、一斉に、こちらを向いて怪訝な顔を見せる。
「……? そんなものじゃ無いの? 確かに教えて貰える機会は、少ないのかも知れないけど」不思議そうな表情を見せるゲルダ――。
彼女らの反応から――、芸人芸人と心の中で侮ってきた彼女たちが、
その実、俺なんかが及びもつかない、語学力の持ち主たちであることを突き付けられ――俺は。
言葉も無く俯いて、肩を落としていた……。
* * *
その日から、遺跡探索に向けての準備を始めた俺たち。
呪文書をあっと言う間に覚え込んでしまったと言う、6人を馬場の周囲で走り込ませる。
――まぁ。今更、体力づくりを始めたところで、遺跡へ出発する日には間に合わないのは、間違いないが……。
放っておけば際限無く、ぐーたらぐーたらし始める特定の人物も居ることもあって。なにもしないよりは遺跡に向かうにあたっての緊張感、危機感を持たせられると言う面から、有意義なことのように思え。馬にぶら下げる人参代わりに、僅かばかりの小遣いを提示し、これを受け入れさせた。
監督としてスキュデリに同走を頼むと、彼女は本当に嬉しそうな様子で、息を切らせ あごを出して、ぜぇぜぇ喘ぐ、魔術師たちを追い立てた。
「ーーあい、すまんかった……」
遊びにやって来たデシレアが、騒々しい、こちらの様子を伺いに来ると――ウルリーカは駆け寄っての平謝り。
ほっぺを膨らませ、デシレアはお小言を並べているようだったが、ウルリーカが先日の俺との森の中での一件について詫びていることを「察する」では無く「読み」取ったのか。溜息をひとつ、ついて水に流してみせた。




