隙間に逃げ込むGの如く
そしてテレビ・ショッピングのオープン・ザ・プライスの際にわざとらしく、なされる穿った質問にも似た問いを彼女に――俺は投げかけていた。
「……やっぱり、危険があるんだろ?」
縮こまるようにして、互いに顔を見合わせる彼女たち。
「……そりゃあ……な?」
「で、剣士を雇おうにも、金も無かったと」
「……せやねん」
ヴィヴィの委縮した様子に突然、火を噴く勢いで捲し立てる、おでこ。
「あ、あんたが……あんたが! お師匠様が用意して下さった路銀で、考え無しに飲み食い始めたのが、悪いんでしょっ!?」
「うっさいわ! おばちゃん、ゆーてたもん!『旅先で旨そうなものを見かけたら、絶対に食っておけ、一生後悔するぞ』って、ゆーてたもん! うちは悪うない! おばちゃんの言いつけ守っただけや!」
「ひ、開き直ったわね……」
ヴィヴィと、ゲルダの争いの声が、白熱しきる前に――誰かに鎮めては、貰えないものかと……テーブルを見回す。
ネルは――手にした夫婦湯呑で、お気に入りのティーパックの紅茶を啜り。
ヴィルマは、陶片に住む相棒と愉しげに話をし。
オークの娘どもは、狩りの合図を待つ猟犬の様に――わくわくしながら。
メルトゥイユは宙を見る様にして――なにごとかを考え。
スコラスチカは――興味無さそうに自らの爪をチェック。
(……よしっ)
誰ひとり、この場を鎮める頼みには、なりそうに無いと理解した俺は――。
夕食の終わりを小さく告げて、席を立ち。彼女たちの争いに巻き込まれ、面倒臭い事態に巻き込まれる前に――食堂からそそくさと、退散することにした。
* * *
――翌日――
朝も早くから芸人どもを集めた俺は――。
昨夜の内にトキノに頼んで、呪文書の文書化と共通語の訳を付けて貰ったものを……あちらのコンビニで人数分、コピーして閉じたものを彼女たちに手渡した。




