秘中の秘
「それは違うけど……なんかね? その時のアンタって、すっごい生き急いでたような感じだったのよ?。アタシに釣り合うオスに成る~ぅ、……みたいなことを考えてたみたいな気もするけど……おバぁカさん♬ アタシはアンタのこと、つがってくれただけで満足してたのにね♪」
頭を押さえていた手を離して片肘を突き、頬杖をつく――
「……で、生き急いだ俺ちゃんは……必死にお勉強して、魔術を身に着けて辺境伯とやらにまで出世したと? そう言うことか?」
「愛よねぇ~♪ アタシ、愛されまくり♬ そりゃあ死んで生まれ変わったアンタ探し出して、ストーカーばりのアプローチもやらかしますわ」
ネルが軽い口調で、出会った日のことを口にする。
「……その節は、本当にありがとうございます」
「いい~えぇ♬ お気になさらないで?」
他愛ない、やり取りを交わし――。
「その時の俺って……やっぱ魔導書の影響で、おかしかったりしたのか?」
オーサの話を思い返せば、本を読み解いた人間は……そのように成るとのことだったが……かつての俺はネルに、とんでもない心労を掛けたのでは無いだろうかと考えるとーー
「炯々と……双眸に狂気の色を灯す、人倫を踏み外した……恐るべき大魔法使い」
「はあ?!」
驚いて顔を向けた俺に、ネルは、くちづけをして離れると――可笑しそうに口元に手をあて、笑う。
「ないないない♪ アタシたち姉妹は基本的に意識や感覚は繋がっているけれど……」
続いて聞かされる驚きの言葉.
(それって、俺とお前の夜中の運動会……その他も全部筒抜けってことか!?)
「――あ、それは常時じゃないから? 安心していいわよ?」




