呑んだくれの言葉に耳を疑う
ふと、バルコニーから外の様子を眺めると、デシレアが屋敷の外れにメルトゥイユのためと思われる、教会めいた建築物を創造していた。
ヴィルマの上げる歓喜の声。
神と言う存在を不愉快に思う龍の彼女に、宗教建築物を造らせるなど、普通に考えれば無理な話なのだろうが――デシレアも打算無しに上げられるヴィルマの声に、その気にさせられてしまうのか。
(……世話に、成りっ放しなんだぞ)
バルコニーから身を乗り出して、ヴィルマに釘をとも思ったが……彼女たちの嬉し気な声を聞いていると、それも躊躇われ……。
俺は、そちらの様子には――目を瞑ることにして、手にした次の本を開いて読書を続けることにした。
* * *
「んんんん~~~~~~っつ!?」
アルコール臭い空気を纏って、手には焼酎のペットボトルの取っ手を握って、大きく伸びをしながらネルが部屋にやって来た。
「んはぁっ……やっぱり、ガブガブくん飲みながら、お昼寝するの最高♪」
「…………」(騒々しいのが来た)
「嬉しいくせにぃ~♬ アンタが愛しまくりの、いとしのネルちゃんよぉ~? ねぇ? アンタ? 今晩のご飯は、なにが食べたい? あっ、アタシってのは……ちょっと遠慮してね? みんなお腹空かせちゃうから」
(……う、うるさい。本が読めん)
「なになになぁにぃ~? なんの本読んでるの? って、アンタ……」
鬱陶しく纏わりついて来たネルが――本を覗き込むなり、呆れたかのような声。
「自分で昔書いた呪文書なんて読んでるの? ……あ、そうか。……昔って言っても、生まれ変わる前のことだもんね♬ 覚えてないか。んー……夕食どうしようかしらねぇ……これだけは、毎日本当に大変……。思いついちゃえば……チャチャっと、終わっちゃうんだけど……う~ん」




