驚愕の魔術
……からん。
手にした杖を手放して、ひとつ息をついてみせていた。
「ん? ん? んん? んんん~~~?」
失敗したのか? それともこれは、……アレだろうか? テレビの超能力を取り扱う番組の中で――超能力者とされる出演者が額に汗を滲ませて、何度も何度もトライした末に成功させる……ないし失敗に終わる演出の類だろうか? もしくは間を持たせて仲間の誰かが……仕込みを完了させるための、時間を稼ごうとしているのだろうか……。
なにが起こっているのか、アレコレ考えている俺を余所に――彼女はゆっくりと、手を持ち上げて、杖の向く方向を指差し、俺の考えのいずれもが、正鵠を射損ねたことを告げた。
「……南は、多分こっちや」
……目が点になりそう。空を見上げて太陽の向きを確認する。いや、実際には見るまでも無く。毎朝、部屋に差し込む光で、その程度のこと把握はしてはいたが……万が一のこともある――どうでも良いわ!。
「おっしゃあ! 決まったで! ねぇちゃんの魔術! 〝南を指す杖〟。これで、ウチら姉妹揃って旦はんのお妾になって、左うちわ確定や! やったで! ねぇちゃん」
はしゃぐ妹に顔を向け「……んっ」と、小さく頷いてみせる姉。
「ヴィヴィ……ちょっと」俺は手招きして、妹を近くに呼ぶ。
「……なんやぁ~? 旦はぁん♪ ねぇちゃんの魔術に、ときめいたか? 早速ウチらを囲いとぉなって、お妾さんにしとーなったか? イヤやわぁ~♬ 旦はん、がっつき過ぎやぁ~♡ 今夜のお相手決めたって、ウチがねえちゃんに伝えたれば、えぇんやな? 任しとき! ……でも、こう言うことは旦はんの口から……直接、ビシッって、ねぇちゃんに伝えたった方が、漢としての株は上がる思うで? ……ま♪ 最初の1発目やものな。その辺、目ぇつぶったr」
「……お前マジで、ちょっと黙れ」
静かに詰め寄る俺の空気に気押されたかのように――ヴィヴィは頷き、
「……な、なんか……至らない点でも、ありました……やろか……」
歯切れも悪く。
「……これ」倒れたギアネリの杖を指差す「これが……魔術?」




