魔術実演
「働くこと馬車馬の如し、働かざること社畜の如し! つまりは働けっ!!」
彼女らが金を必要としていることは、まぁ理解した。
この時点において理由は正直、面倒臭そうだったので、まだ聞いては居なかったが――兎に角。
俺にハーレム要員など、必要無いことを彼女らに伝え、路銀なりを手渡す、真っ当な口実作りのために、仕事を与えるべく――それぞれに、できることを御披露戴く運びに。
……まぁ、オーサに脅かされ、手を引く事にしたにしても。実際に魔術というものを、見てみたかったというのもあった――。
我ながら腐った性根にも思え無くもない。
年端も行かない少女たちに、危険を押し付けておいて、それを見たいと言う……自身の ろくでなしさ加減も大してものではある。
屋敷の中で魔術を御披露戴くのは、デシレアが作ってくれた屋敷を傷つけるかも知れないとも考え、かつての住まいの――今はスコラスチカの仕事場となっている、切妻屋根の小屋のそばまで足を運ぶことにした。
「いよぉっし! 誰から行く? 旦はんビビらしたろや♪ あ! ちなみに、ウチはトリ! トリ希望な!」
「ヴィヴィ! ……あんた、もう黙れ! 黙りなさい! 裏切者!」
烏の濡れ羽色と言うものを、初めて俺に理解させた、長い髪の少女、ゲルダは――ヴィヴィ相手に食って掛かる。
「……ほな。最初は、ウチから行くな」
相変わらずの眠たげな眼差し――独特の訛りとテンポの……『はんなり』とも聞き取れる話口調のギアネリが皆に先んじて、一歩前に踏み出す。
「いよぉっし! ねぇちゃん! いっちょ魔術を見たこと無いゆうてる、旦はんビビらしたれやあぁ!?」
妹から飛ぶ、姉への声援。
――ギアネリは、それに応えるでも無く、手にした杖を地面と垂直に支え持ち――静かに目を閉ざして、呪文と思しい言葉を小声で呟き始める。
「――、……、――、……、――、……、――、……」
そして、そのまま。ゆっくりと身体を片足を支点に、円を描くように回転させ――。
 




