異世界語授業 ~海のナマモノ~
「アタシたちは『存在が大き過ぎるせいで、ひとつの世界に安定した状態で、存在を維持することが難しいが……同時に、個々が有するそれぞれの属性は……あらゆる世界に存在している可能性が存在する』……だったかしら?」
誰かの言葉を一言一言、思い返している様子で、ネルは言葉を続ける。
「要は、アンタの世界も含めて、色々な場所に同時に存在できているから、大体のことは知ってはいるけれど……直接干渉するのは面倒臭い……。そんなところ……かしらね?」
そこまで説明を聞いたあとで、俺は──話の内容を理解することを諦めた。
「説明して貰って、なんだけど……理解できなかったわ……」
「別にいいわよ♪ さ、先生ごっこ始めるわよぉ?」
なんだか不安になる言葉の後で、頬にキスをして──彼女は、この世界に関わることを、丁寧に教えてくれた。
* * *
「ハイ♪ 今から読むから、後を続けてね?」
ネルは意外なほど綺麗な字で、板キレに書いた文字を、シルウェストリスの言葉で、声に出して読み上げる。
「『いつぞハいつぞハとねらいすましてゐたかいがあつて、けふといふけふ、とうとうとらまへたア』ハイっ♪ 次、アンタの番よ?」
「『いつぞハ……いつぞハと……ねらい……すましてゐたかいがあつて……、けふといふけふ、とうとう……とらまへたア……』」(む、難しい)
「ほら? 教えてって、言ったのはアンタなんだから、しっかりやる!」
「おぉ……時間はあるしな」
現世で妹のオーサへのお土産に買ってきた、あのウ〇コ棒を借りて来て、教鞭として振るうネルの授業は、日課となっていた。
「それだけじゃないわよ? アンタは、アタシのおっぱいのお陰で、花さんに頭を壊されても、すぐ治るくらいなんだから。分かり易く言うなら……。そうね、今のアンタの頭は、新品ピカピカ。生まれたばかりの、赤ん坊の脳細胞並みの吸収力と、成人の分別を併せ持っているのと同じハズよ。きっとすぐに、こちらの共通語くらいは覚えられるわ」




