だから言っておいたのに
この色の抜けた髪の、短いツインテールの彼女の、勢いだけの言葉に不安を抱きつつも――。
(……まぁ、なにも知らないまま、スコラスチカに会うよりは)
と、俺は説明責任を果たしたのだと、不十分な情報を与えることだけしか行わなかった分際で――彼女らのファースト・コンタクトを上手く取りなすための説明の難しさに音を挙げ、早々に成り行きに任せてしまおうと腹に決めた。
先頭を歩く有栖川さんが、応接室の扉を開く。勧められて中へ。
「悪いわねぇ~♪」カウチソファーにしなだれ、スコラスチカが、暢気な声。
「いいよ別に」立ち合いなんて――どのような契約で、同席を求められたのかは、分からなかったが
この有栖川さんという、如才の無い人物を交えての契約に、なにかを心配する必要性が無いことは分かっていた。
デシレアも信頼するこの人が、上手く図らってくれるのは分かりきってる。
大した労を俺が払う訳では無いだろう。気負うことも無く、彼女の側の椅子に腰掛ける。
「……あら? お客さん?」
顔を俺に向けたままの広い視野角で――彼女は部屋に入って来た、有栖川さんを除く、6人を視認。
「なんやぁ~♪ 驚かすんや無いでぇ。おっかない、おっかないって、ぺっぴんさんが居るだけや……な……」
ソファーに気怠げに身を預ける彼女――スコラスチカを一瞬細長いクッションか何かを抱いて横たわっているとでも……見間違えたのかも知れない。
――わずかな沈黙ののち、悲鳴にも似た絶叫。
先ほどの勢いばかりの空約束が、なんの効力も無かったことを示していた。
 




