揉めてらっしゃる? 【Picture】
そして、ほとんどの皆が代わり映えも無ければ、色気も無いデザインの、分厚い、いわゆる牛乳瓶底のようなレンズの眼鏡を掛け
手には揃いも揃って、なんの変哲も何もない、直径3~4センチほど、長さは170センチほどの真っすぐな――ただの木の棒。
「……ま、まさか……眼鏡と言う物が……あれほど高価なものだったとは……」
帽子とローブの隙間から、明るい髪色のショート・ヘアーを覗かせる娘が、声を震わせ、呟く声が風に流されて聞こえて来る――遅れて彼女ら一行の話す声が。
「眼鏡は……イイ。問題は、剣を扱える人間が……必要。でも……もう、お金も無い」
「ヴィヴィが……いけないんじゃない……。どうするのよ? ギルドに登録しようにも通用料さえ払えなくなるから、街を逃げ出す羽目になっちゃったじゃない」
「ウチか?! ウチが全部あかんのか!? あんたかて一緒になって、飲み食いしまくっとったやないか!!」
「仕方無いでしょ! 美味しかったんだから!!」
「……旨かったなぁ。あの魚を小麦の生地で包んで焼いた奴……。香草が利いてて」
「や、やめて! ギアネリ! あんたの妹の考え無しで、あたしたち今日から野宿なのよ?! 運河を行く船代も無いから、森まで歩いて帰らないと行けないのよ! お腹に響くこと言わないで?!」
「……も……もぅ……ヤダぁ……うぅ……うえぇ……」
「泣くな! 泣くんや無い! イープ! 余計、お腹減ってまうで?!」
(…………森?)
盗み聞きしている様で気は咎めたが――こちらは、馬が歩くに任せて揺られる身。
風に流されてくる彼女たちの話声は、否が応にも聞く羽目に。まぁ、不可抗力と言う奴だ(しかし、森?)
なんだかんだで、こちらに住んで長くなるにもかかわらず、ネルたち姉妹にも、村のオークたちにも――彼女らの話す、運河の先にあると言う森とやらの話など……聞いたことも無かった。




