ネルさんは、欲しがり屋さん
「……あ~うん。似合ってる、似合ってるよ。それでなんなの? その格好は? なんか……無理めのAVに登場する、女教師か……OLにしか、見えないんだけどもさ?」
「アンタ……最近、ひどくない? 会ってすぐの頃には、もーちょっと、つがいに対する気遣いが、あったと思うわよ?」
「あ~スマン。それは そうかも知れん。素直に謝るよ。それで? 意図するところは分かるし、趣旨も理解できるんだけど、わざわざどーしたの? その格好はさ?」
「先生をするにあたって、形から入ってみたんじゃない。どやっ♪」
俺は、これを見せられるために……あんな緊張感に苛まれたという訳か……。
「前から、思ってたんだけどさ?」
「……な、なによ? 酷いこと言うつもり? 泣くわよ? もしアンタが、その気なら、それはも~面倒臭いを通り越して、ちょっと引くくらい、泣き喚いてやるわよ?」
「いや、そうじゃなくてさ……」
実際、泣き出されたら面倒臭そうなだけに……ワンクッション。
「お前ってさ? そう言う……現世の情報とか、なんで詳しい訳?」
「え? どーしたのよ?」
「いやさぁ? 現世の俺に会いに来るには『高かった』って言う、転移のための……がっかりオブジェが必要だった訳だよな?」
「えぇ。それが?」
「そこから察するに、現世に実際やって来たのは……あの時くらいで、来る機会が在ったとしても、そう頻繁には来ていた訳じゃないんだろ? どーしてそんなに、あちらのことに詳しいのかとね? 思った訳ですよ。ハイ」
俺の口から飛び出す言葉に、身構えていたネルが構えを解く。
「なんだ……。そんなこと?」
安堵の溜息、──そして
「なんて言ったら、良いのかしらね……。アンタの言う通り、あちら側に……、そう頻繁に出かけたことは、無かったんだけれどね? ……え~っと誰かが、なんか言ってたわね……」
なにやら必死に思い出そうと目を瞑って、考え込む。




