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蜘蛛の糸の毒

 礼拝堂に誰も居なくなると、入口の扉を閉ざして、俺はことの次第をハラハラしつつ見守っていたであろう人物に声をかけた――。


「で? あの子は大層な喜び様だった訳ですが? 会ってやらなくて良いんですかね?」


 礼拝堂の天井から――月明かりを反射させる1本の糸。音も無く降りてくるスコラスチカ。


「風に流れた……私の糸の毒であの子、目が見えなくなったのよ? どんな顔して、顔を合わせろってってのよ」


 そうかも知れんけども……と、口に出しそうになったところで、俺はそれをやめた。


 あの子に対しての心遣いと、自身の糸に含まれる毒が、もたらした事態に対しての自責の念を慮れば……。


 頭の悪い俺には、かける言葉なんて思いつかなかった。


 彼女が話す糸の毒。聞いたことも無い話だったこともあって――俺は、この場に来る前に、トキノに訊ねてみていた。


 するとあちら側の――あくまでも「蜘蛛」に関する話であり、アラーニェにこれが当てはまるか、どうかは分からないと前置きされた上で、その手の話であれば、実際に存在するのだとか。


 蜘蛛の糸が目に入った結果、炎症を起こしたと言う事例を挙げてくれた。


 これは巣に付いた大気中の汚染物質等によるものなどでは無く、蜘蛛が自身の身繕いをする際に使用する、高い殺菌性も有する捕食の際の消化酵素。


 これを以て巣を清潔に保つ際などに、捕食対象に注入する口腔内の極微量の神経毒、壊死毒、麻痺毒が複雑に混合された毒が、添加されてしまうためでは無いか? と考えられているという――仮説。


 良く目にするジョロウグモさえ、JSTX−3と言う毒を持っているらしい。人間にとって微量過ぎるおかげから被害が、発生することは……まず無いものの。


 スコラスチカのサイズの蜘蛛が、この種の毒を持っていたとしたならば。

 巣を清掃する際に、この毒で糸が汚染されていたならば。


 ――あの子の目の光に影を作ってしまった、原因として成立し得ると言う。

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