手に手を取って、とんずらしよう
なんてことを! と声を上げたいところだったが……、その言葉は、彼女の愉し気に上げる高らかな笑い声に遮られていた――。
「イイわ♡ 担保とかどーでもイイ! 貴方を信用したげる。森を離れる道すがらに、色々お話を聞かせて♪」
先ほどまでの警戒っぷりは嘘のように親し気に。
彼女は俺の腕に白い女の腕を絡ませて、同道することを了承してくれた――。
* * *
倒れた際にも握り締めたままだった、陶片に付いた土を手で払い、メルトゥイユに連絡を入れる。彼女に俺が乗って来た青鹿毛を空馬として連れ帰ってくれるように頼むと――俺はスコラスチカを連れて、できる限り森を進み、ひとまずは我が家を目指すことにした。
この周辺で、我が家以上に安全な場所は無いに違いない。
……と、思いたい。
――3日ほど森を歩いた。
その日は、スコラスチカが捕らえてくれたムクドリを、熱中症予防に持ち歩いていた、岩塩を振って焼いたものを平らげ――しばらく歩き。
退屈しのぎのおしゃべりに、根堀り葉堀りと、ありとあらゆることを聞かれ続けていた。
「それでそれで♪ 色男さんは、どうして死ななくなっちゃったの?」
興味津々といった感じと言うよりも、どうしても聞き出したい情報を、いかにして俺の機嫌を損ねること無く引き出すか? そんな物の聞き方。
「……んー、それについては、ちょっと……」
口籠るや、スコラスチカは「聞ぃ~きたぁ~いぃ」……と、まぁ。こんな具合の声。そのことから考えても……。この洞察……俺にしては珍しく、外れてはいないのでは無かろうか?。
彼女は必死に俺から話を引き出そうと、饗応めいた声をあげ続ける。
(……死なない身体に関心を持つと言うのは、まぁ、分かるけど……)




