ネル、チャーム・ポイントについてを説く
──シルウェストリスにやって来て、数ヶ月。
ネルと日がら1日飽きもせず、いちゃつくのも悪くは無かったが……それ以外は、お尻拭きの麦藁の束を、叩くくらいしかやることの無い毎日。
意外にもネルは、何かにつけて、俺の面倒を甲斐甲斐しく見てくれた。
繕い物、掃除に炊事、洗濯……。
ネルが言うには、どれも──生まれ変わる以前の、俺との生活の中で、身に着けたものらしい。良い奥さんだったのだろうと言うことは、一緒に暮らし始めて、すぐに分かった。
「物」も無ければ、大した娯楽も無い暮らしではあったが、スローライフとしては、文句の付け処も無い、生活に違いない。
……けれども。その頃には、せかせか生きることが、至って普通の日本に生まれた俺には、そんな──なんともいえない毎日を過ごすことに罪悪感めいたものを感じるようにもなっていた。
「……あ~、ネルさん?」
「おじーちゃん? ごはんは今、食べたでしょ?」
「違ぇよ。ボケんな」
昼食で使った、食器を洗うため、泉に出かけようとするネルを呼び止めると怪訝な表情。
「何よ? あらたまって」
「この間、花さんのプロフィールを聞かせてくれた時に、言ってたよな?」
「何を?」
「花さんが、周辺の村々の狩人に追い立てられて、云々ってアレだよ」
「えっ……何? アンタ。花さんのために、お礼参りにでも出かけるつもり? 袋叩きになるのが目に見えてるから、やめておきなさいよ? 喧嘩弱いでしょ?」
「違ぇよ。あ~もう……。あ~もう……。話、進みゃしねぇ……。なんなんだ……お前? 普段、不必要なくらい察しがいいクセして……。時折、ポンコツになるのはよ?」
「それはね……」
なにやら、もじもじ……し始めるネルさん。
「アタシのチャーム・ポイントの……泣き黒子なんかと……一緒……みたいな?」
「――? 意味が分からんのだけども……」




