森に分け入る
メルトゥイユを伴って訪れた森は、プレァリアの街から数日の距離に存在していた。鬱蒼とした、この暗い森の奥にスコラスチカは住むと言う。
ここにやって来る道すがら聞いた――女神アレクサンドラからの話。彼女は高い知性を持ち合わせているとのことで、修道女を連れて行けば、きっと警戒するだろうとのこと。
「じゃあメルトゥイユ? 馬たちは任せるけど……。こんな場所に一人で、本当に大丈夫か?」
盗賊たちが、うろつく様な場所に、彼女一人残して行くのは心配で仕方が無かったが……馬を森の中に連れて行く訳にも行かず、その面倒は彼女に頼む他無かった。
「大丈夫ですよ♪ 鎚矛も盾も鎖帷子も着てきました。アレクサンドラ様も、お護り下さいますし♬」(……一番最後の奴が、すっげぇ不安)
「なにかあったら、早めに『陶片』で連絡してくれよ?」
彼女にそう告げて、鞍袋から用を足す時に「絶対必須の」トイレットペーパー2巻きを取り出すと、ビニールに容れて持って行くことにした。陶片を呼び出して――森の中に足を踏み入れる。
ツォンカパに貰った剣は、置いて行くことにした。
不安はまぁ……ありはしたが……。別に目的の彼女と諍いに来た訳でも無し。警戒されるような物を携えるのは、慎むべきに思える。
「トキノ? ナビ的なものは、あったりするのか?」
陶片に住み着く、彼女に訊ねると、類するモノが存在するらしい。すぐにも立ち上げて貰う。画面に自身の所在地を示す光点と、周辺地形の地図が表示された。
人工衛星なんか飛んでいる訳も無い。デシレアが司る属性を考えるなら……地磁気か、なにかを読み取るなどして……成立しているシステムなのだろうか。
謎のテクノロジーの考察は置いておくとして、トキノに予想される目的地を表示して貰い――点る光点を頼りに、森を進む。




