スコラスチカが住む森
その少女の祈りの内容は上半身は美しい女。下半身は巨大な蜘蛛という異形、アラーニェの友を救いたいと言う、あの女神には、もったいないほど純粋無垢で清らかなもの。
「どうやら……プレァリアの周辺に巣食う賊を、軍馬で狩り回るクィンヒルデさんたちから、逃れるため――森に入り込んだ盗賊がアラーニェを目にして逃げ出し、そこを捕縛されて、話したらしいのです『森に蜘蛛の姿の魔物が居る!』……と」(……自分たちより先に、そのアラーニェとやらを退治しろよと?)
身勝手な盗賊の論調が、頭に浮かぶ。
「……蜘蛛か。脚が沢山で、ワキワキ♬ 動くサマがカッコイイのじゃ。巣を壊すのも楽しくて、わしは大好きなのじゃ♪」
陶片に住み着いたトキノの妹に、翻訳された言葉を耳にして、ヴィルマは話の内容に思いを馳せているよう(……アラーニェに、会ったら迷惑かける気満々か?)
「私たち聖鈴教会の教徒の価値観としましては……お恥ずかしながら。そのアラーニェは見つけ次第、駆除と言うことになりかねず……。ギルドの方も恐らくは、同様で……じきに、そのアラーニェには報奨金が、かけられることになりますかと……。そのような訳で、アレクサンドラ様は思い悩まれた末に、信徒では無いツモイさんにお願いに伺ったという……ことのようでした……」
(……えっ? なに? なんか今回……俺が悪者?)
「それでぇ? あの……余所の巣の寝室に、御降臨あそばすのが大好きな覗き魔は、アタシのつがい使ってぇ? 支払いは、どうするって?」
――空気の流れ的なものを読め、呑んだくれめ。
聞きにくいことを躊躇もしねぇ
コイツの心臓には、毛が生えているんじゃなかろうか? 真似できん。……いや、したいとも思わんが――。




