塩対応
「あの娘が信仰してるみたいだから、ココに入り込めるようにはしておいてあげたけど? それとこれとは別でしょ? 遠慮なさいな、遠慮を」
ネルはベッドの片隅に蹴りやった薄手のタオルケットを引っ掴むと――それで身体を隠して女神に詰め寄る。
(……お、おい? ネルさん? お前にそれ……タオルケットを持っていかれると……俺。まろびだしたままになっちゃうんです……よ?)
俺の心の声に目だけで「お黙りなさいな」と返したあとで――
「あぁ……アンタ? この余所の寝室にいきなりやって来る、エロ女神を そのジャスティス棒で、おもてなししてあげなさいな。お客様みたいだし。許す! 突っ込んでも善し!!」
「ひっ?!」
理不尽なネルの物言いに――途端に怯えた声をあげるアレクサンドラ。
俺は、ベッド脇に脱ぎ散らかした、バスローブを手だけで探る。
「……それでぇ? 女神さんは、こんな夜更けに……なんの御用なんですかね?」
ネルと女神に背中を向けたまま、指先で手繰り寄せたバスローブを着込もうと、広げていると
女神は俺に短く「感謝いたします」と礼を述べ、この場に御降臨あそばされた――理由についてを話し始めた。
「……百千万億 春夏秋冬さん。大変、申し上げづらいのですが……。ひとりの教徒の願いを叶えるために――ギルドを通した仕事と言う訳では無いのですが……私から……ひとつ頼まれては、頂けないでしょうか……?」
「……えっ? 嫌です」
「えっ?」
「んっ?」
「嫌です」
女神アレクサンドラにしても、ネルにしても――俺の口から出た言葉が、予想外なものだったのか。2人共に、俺の返答に狐につままれた顔を見せていた。
「嫌です」




