新撰組が手緩く思える
「……気持ちはありがたいけど、別に良いわ……あの娘たちが走り回らないと、結果……じきに この辺りまで物騒になるってのは、まぁ……分かるし」
こいつにしては珍しく、自身へのケアを遠慮する旨を伝えて来た。
いつもであれば……。「かまえ、かまえ、ちやほやしろ!」
と、うるさいのが、コイツであるのに――コイツの態度に、少し心配を覚えていると、ネルは溜息。
「アタシにも色々あんのよ……さてと」
腕を捲ろうとして、もたつく彼女の袖を代わって捲り上げてやる。
「あの娘たちが居ない間にベッドの掛け布団とか、シーツ洗っちゃわないと」
少し憂鬱そうな空気を、その場に残して、洗濯場へと向かって行った。
* * *
賊を狩りに出たオークの娘たちのことを考えると――追い立てられる賊徒たちに憐れみと同情を覚える。
確か、京都の治安維持を請け負った新撰組は、227名だっただろうか? ……本や資料によって、総数は、まちまちの様ではあるけども。5年の活動期間中に殺害した人数は、たったの26名だとか。
今、飛び出して行ったあいつら。その数を1人で……あっと言う間に、狩り尽しかねないんですが……。
少なくとも新撰組からは、魔剣ウーラガンドも、戦車も、オークも、長い年月を経て品種改良の末に生み出された重馬ペルシュロンも登場しない。
(人間の賊なんて、一方的に狩られるのが見えてる……)
この辺りに一体、どれだけの数の賊が存在するのかは、分からないが……。
追い立てられる賊共を嬉々として追い詰める、あいつらオークたちのことを思うと――まぁ……自業自得か。
ギルド側が「一人当たり一律で、銀貨3枚」と言って来たのは、暗に生け捕りにせよとの意味だろう。




