争いごと大好き♡
大体からして、アレが危険な代物だと言うのなら、領域の中でのことであれば、ありとあらゆることを察して見せるネルが止めたに違いない。そして、それ以前に あいつらが、賊ごときの相手で手傷を負う状況と言うのも……ちょっと想像ができない。
(もし、なにかあれば……帰って来たあいつらを、俺が治そ……)。
――と、そんなことを考えていると。
「ウルリーカは、プレァリアの東! 私は南だ! スキュデリ! お前は西を!」
クィンヒルデの再度の号令の元、オークたちの騎馬軍団は出立した。
「無事を祈っておるぞー♪ お土産をよろしくなのじゃあぁー♬」
* * *
皆を送り出したあと、屋敷に戻ると――不機嫌な顔をしたネルが玄関で、俺とヴィルマを出迎えた。
「……あの娘たちにも困ったもんだわ」
その様子を見るや、すぐさま俺にかがむように言って、耳打ちするヴィルマ。
「……ツガータ、ネルのメンテナンスをサボり気味なんじゃあるまいの? 安全棒は毎晩、ちゃんと突っ込んでおるのか?」(なんだよ……安全棒って)
俺のパートナーをまるで、原子炉みたいに言うんじゃねぇ……と、言いたいところをグッと我慢。それをうっかり口にしようものなら、この汚言症ロリを相手に、朝から生臭いトークに花咲かせる羽目にもなりかねず――その言葉を呑み込んだ。断固、拒否する。
「まぁ……おまえって、俺と一緒で争いごと嫌いだもんな……」
基本的に「食べる」「身を護る」ということ以外での血を流すことを、とことん嫌うネルには――オークの娘共のはしゃぎっぷりは、理解不能と言ったところなのだろう。
ヴィルマに言われたからではなかったが……。ネルの様子に 俺は今日1日、彼女の御機嫌取りのためだけに費やすのも仕方無いかとも考え始めているとーー褐色ロリは、いつも通りの勘働きで察したのか。どこかへと走り去って行く。




