ヴィルマの水薬 【Picture】
そしてその返って来た言葉はといえば――
「……オークのメスは……腹に子を孕んでいる時と、子育ての最中が一番恐ろしい……」
という……何ともいえないもの。
出立前に重い空気にさせてしまったそいつの肩を「スマンかった」と、無言で2~3度叩いてお詫び。
――準備を整え。軍馬で整列するオークたち。
デシレアによって創り出された合成皮革エンデュランス製の馬具は、高級外国車のインテリアのような美しさで、揃った数も数だったにしても壮観の一言。
整列したオークの脇を――これまたデシレアが創り出し、選り抜いた2頭に引かせた美しいミスリルの戦車に乗って通り過ぎるクィンヒルデ。
先頭で戦車を止めると、指輪から出した魔剣を掲げ――
「賊一匹につき銀貨3枚! 稼ぐぞ! お前たち!!」
なんとも素直な……分かり易過ぎる号令でもって、猛るオークたちを鼓舞。
「通すのじゃあ~、通すのじゃ~」
(……?)
お祭り騒ぎのこの状況を思えば、こいつが顔を出すのは分かってはいたけど……ヴィルマが何本かの――俺たちの世界から持ち込んだペットボトル
(ジンジャー・ショット?)
……を持って、オークたちに駆け寄っていた。
(なにしてんだ……アイツ?)
みんなの間をくるくる回り、赤紫色をした不安しか掻き立てられない色合いのペットボトルを手渡すと俺のそばにきて得意げ。
「……あいつらに、なに渡してたのお前?」
空気から察するに、単なる飲み物では無さそう……。
「薬草に通ずるロア、ロコに教えて貰った飲む系の傷薬を渡して来たのじゃ♪ 善いことをしたあとは気分が良いのじゃ♫ ツガータよ。わしは今日……グミが怖いぞ?」
(……傷薬って、大丈夫なのかよ)
湧き上がる不安も、まぁ……有りはしたけれど。
ドクダミや、ヨモギ的ななにかなのかも知れない。聞くのも怖いし……咎めることはしないでおこう。




