蜘蛛な、あなた 【Picture】
どうやらそれなりには価値を認めているらしい。溜飲は下げることに……しよう。
その夜、ナビゲーターたちが『陶片』の扱い方を都度レクチャーしていた? 甲斐もあってか使い方を早くも吸収してみせた女共は、皆浮かれに浮かれて――些細なことで夜遅くまで、着信音を鳴らし続けた。
「ウぅるっさぁいッ! アンタぁ! えっちの最中に落語のイントロ鳴らしてんじゃないわよ! オモチャは指輪に仕舞っときなさい!」
* * *
「――ハ~イ♬ そこの彼氏~ぃ♪ 私に喰べられる気は、なぁい?」
うろくづの森からも、プレァリアの街も離れた森の中。
頭上から陽気な女の耳辺りの良い、共通語によるお誘いの言葉。
「今だったら特別待遇で♪ と~っても綺麗なお姉さんとぉ……今生最後の思い出に交尾できちゃいま~す♡」
「……いえ、間に合ってま……す」
木々の間から差す木漏れ日を手で遮り――声の主を確認。
真っ白な肌に、顔には黒くてパッチリとした人の目の形を成す眼。
その眼窩に納まるのは4つの――昆虫の中ではトンボや蜂たちが持つ複眼とは異なる、甲虫を思わせる単眼。
偶数の倍数だけ単眼を持つことが多い、この種のこと。
側頭部についた丸いなにかは、髪飾りの類ではないに違いない。自身の糸で作りあげたのだろう、シルクのような質感の服を身に着けた女の上半身に、脚を拡げれば端から端まで、4m以上になりそうな蜘蛛の身体を持つ異形の種族――アラーニェ。
依頼された対象で間違い無い。
頭上に張り巡らした巣の上で気怠げに――少し伸びて束ねた黒髪をいじりいじり
「……あ~ぁ、フラれちゃった♪」
残念そうに眉尻を下げた。
意外にも、あっさりとした反応。
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