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陶片の娘たち

 厚さも重量もスマホの半分以下。裏にも表にも不細工なカメラのでっぱりも無ければ、画面の上部に訳の分からない切り欠きも無し。スマホに求める夢のデザイン。


「……食事時に持ち出すものじゃ無いでしょ」


「かたいこと言うなって……。この屋敷広いんだから、歩き回りたくないんだよ……」


 デシレアの言葉を借りるなら、スマホに近しい機能を持つ、彼女謹製(きんせい)のアーティファクト。


 ちょっと調べものをするためにネットで検索ということはできない様だったが、内部ストレージに取り込んだ情報を『ナビゲーター』として住まわせたトキノを――更には、今はまだ見ぬ彼女の妹たちを、それぞれに住まわせることで、瞬時に必要な情報を取り出すことが可能なインタフェースとして機能するらしい。


 その他、考えつく限りのスマホで可能なことの多くを果たすことが可能。さらには、ナビゲーターが学習した言語であれば、高度な判断を伴った同時通訳、それぞれの端末間での通話やデータのやり取りも行えるがーーこれはシルウェストリスの魔法技術を応用したものだと説明が、義妹によってなされていた。科学技術であれ魔法技術であれ……専門知識が無い以上、理解不能な技術であることに相違無い訳ではある……。


 かいつまんでの説明を終えると、葡萄で汚れた手を拭いてネルは席を立ち――トキノを生み出した時と同じように、辺りに間抜けな空気を振りまきながら、それぞれの端末に電子の少女たちを創り出して行く。


「同期!」


 俺のスマホに移っていたトキノが、生まれたばかりの妹たちに号令をかけるようにして、画面の中でホイッスルを吹き鳴らすと――自身の学習した、これまでの成果の教示を始める。全端末一斉に姦しく、倍速映像の音声のように(さえず)り始めた。データのやり取りに音声によるコミュニケーションが必ずしも必要だとは、とても思えなかったが……。一から十まで常識はずれな存在の彼女たちに、それを期待して何になると言うのか。

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