断わりきれ無かった……
オーク語か、共通語を用いないと、意思疎通が図れない3人とメルトゥイユが、そんなやりとりに顔を合わせる。この顔ぶれの中において日本語は――俺とネル、あとは遊びに訪れるデシレアと、有栖川さんにしか理解出来ない言葉として、便利に悪用されていた。
「あぁ……すまん、すまん」
しかし、ヴィルマに通じる言葉を用いるとなると、相変わらず他の4人には通じない言葉となる訳だが。
「……そう言や、デシレアから……『みんなに』って、貰ったものがあったんだったわ」
「――?」
席を立つ俺の背後から、マナーに対するネルのお小言。それを聞き流し、デシレアに貰った品を取りに部屋に戻る。
やたら高価そうな、職人の手による装飾が施された、木箱に納められた荷物を手に食卓に戻ると、皆は食事をあらかた済ませ、テーブルの上の果物に手を伸ばしていた。
「普段、ヴィルマの躾に悪い~とか……どの口で言ってんのよ? ……? なによ? その荷物」
悪態をつきつつ葡萄の房を口に運び、俺の抱える荷物に目を向ける。
「なんか今日、デシレアが凄く機嫌が良くてさ……。申し訳無いから、断りはしたんだけど……。結局、色々と貰っちゃったんだよ。あの子が俺用にしつらえた全身鎧とか、地下の階には、デシレアの家にある奴と同じクオリティーの『門』とか……武具の山とかをさ」
武具の山と耳にした途端、喜色満面の笑顔で席を蹴って立ち上がったウルリーカに、それらは既に指輪に仕舞った旨を説明して、また今度の機会にとやんわり断って席に着かせ
「これは その中のひとつで……スマホ……みたいなもの……なの……かなぁ? こちらじゃ、ネット環境無いから、やれることは限られるみたいだけど」
一抱えはある大きさの蝶番で閉じられた木箱の蓋を開くと、中から強化ガラスと、ミスリル合金製の外装を持つ
5.8インチサイズ画面の――スマホそのものと形容しきって差し支えないガジェットと、周辺機器、付属品などを取り出して皆に配って周る。




