自尊心踏んじゃった?
「大盤振る舞いみたいだけど……いいのかよ?」この子のサービス過剰に思える、いつもの心づくし。申し訳無さを感じるやら、不甲斐無さを感じるやら。
「うん♪ いいよ。ちょっと……ウチの銀行で不手際があって、イライラが溜まってたんだけど……無駄遣いしたら、少しスッキリできたしね♬」
自身の銀行の損失? で募らせたストレスを無駄遣いで解消する、この子の感性に呆れるものを感じつつも彼女を抱き上げて、その御厚意に対して素直に礼を述べる。
(……、――?)
抱き上げた瞬間、目をまるくしたまま、表情を固まらせて黙り込む義妹。
以前、この子の髪を撫でた際に見せてくれた、喜びに喜んでくれた――あの時とは異なる反応。
「……おにーちゃん。下ろして……」
言葉少なげに、抱き上げた俺の腕からデシレアは降りたがる。
床に降ろして立たせてやると、俯いたまま身動きもせず……真顔で、なに事かを考え込む様子で、佇んでいた。
慌てて謝ろうとしても「……うぅうん。違うの」と、気にしないでと言うばかり。
その様子に、ウルリーカとスキュデリは顔を見合わせ、デシレアの顔を覗き込むようにしゃがみ込む。
「……御屋形様? これは……その……」
言葉を選びながらと言った感じで、諭すように俺に声を掛けるスキュデリ
「か、構わん。構わんから言ってくれスキュデリ。俺は、デシレアになにか、やらかしちまったのか?」
これほど……世話になりっ放しの義妹に――何かとんでもない粗相を働いてしまったのか? 自らのいたらなさを思って……泡を食う。
「……あ~ぁ、こりゃアレだわ」
ウルリーカですら察してみせた!? 俺はそれほどにアホの子だったのか……。
「ツモイよぉ? 抱っこは、マジぃだろ? 抱っこは……。分かる分かる。オレもそうだったぜ。子供扱いされるってのは、なんてぇか、こう……屈辱ぅ~!! って感じで、目の前がこう……真っ黒か、真っ赤に染まっちまって、そうなるもんだよなぁ」




