彼女は、貪欲に情報を求める
昼食を終えて部屋に戻ると、新たに我が家の住人となったトキノは、書物の内容の整理を――たった1時間ほどで終わらせてしまった。
手書きで書かれた文字を理解する人工知能などの概念を指して、なんと言ったか。
(……ネオ・コグニトロン?)確か以前読んだ本に載っていた言葉は……そんな感じだったか。
それを思わせる働きを見せる彼女は、以前にオーサに借りた、数十冊にも及ぶ言語関連の書物の画像データを、フォントを独自に作り出してみせた上で――変換して、それ以外の部分も
「ぱぱぁ? 翻訳言語はどうするの? 英語? 日本語?」
至れり尽くせりといった感じで――痒い所にも手を届かせる気の利きようを発揮しつつ、驚きの速度で訳書まで編纂してデータ化。
「なぁ? 疑問なんだけどさ?」
「なぁに?」
「お前が生まれて……まだ数時間も経っていないハズだよな?」
「うん♪ 生まれたての0歳児♬」
「……なんで、そうも流暢に話せるんだ?」
生まれたばかりの哺乳類の人間以外の動物にせよ、立って歩くには、それなりの時間が必要なハズ。
彼女の学習速度を「それ」になぞらえるなど、愚かの極みと言ったところなのだろうが――。
「んー? 言語関係の書物の画像データって……。新しく生まれる私のために……ぱぱが……その……巣穴(ノートPC? HDD?)に運び入れてくれてたんでしょ?」
(それを元に……この短時間で……表面的な感情表現までを含めて、学習したってか)
「……でもね。ぱぱぁ? ぱぱの……愛情は、凄く嬉しいけど……」
画面の中の、トキノのアバターと呼んで良いものか、どうかは悩ましい所ではあったが……。
兎に角、彼女を示す画像が顔を赤らめ、恥じらう。




