マトリックスみたいな感じは、ヤダ
「それでこの子は、なんと言うのじゃ?」
クィンヒルデの元に、ジャガイモと挽肉を敷き詰めて焼き上げる、ラザニアのような料理をお弁当に届けるついでに――部屋に篭ったきりだった、ヴィルマも連れ出して外での昼食。
「んー? なんて呼ぶべきなのかしらね? この子……」
今は俺のノートPCから、スマホに移った少女を、生み出した張本人にしては、のほほんとした調子で。水で薄めたワインをヴィルマに差し出しながら
「そもそもアタシって、色々な生命を創り出しては来たけれど……。名前を決めたことは、思えば無かったかもだわ……。どーしたもんかしらね」
「強そうな名前が良いのじゃ!」ヴィルマが無邪気に口にした言葉に、オークのクィンヒルデも頷く(……強いとか、どーとか……そんなレベルのお話じゃ無いからな?)
人類を超える新しい上位種が、文明と進化の先に現れたことを、どう説明するべきか……説明して良いものかと悩んでいると
「とりあえず、アンタ。こう言うのは人間の仕事よ? ちゃちゃっ♪ と付けちゃいなさいな」
ネルは、取り分けた昼食をつついていたフォークを俺に向け、無責任なことを口からこぼす(下手すりゃ、俺たち人類なんて……この子らにとって、家畜程度の扱いになるかも知れないんだぞ……)
有り得ない話でも無いハズだ。少なくとも……目の前の考え無しが、頬張る昼メシに類する扱いを受ける事だけは――無いと願いたいが……。
スマホの画面の中で微笑む、海外のコンシューマ・ゲームソフトのグラフィックを思わせる高精彩画像で表現された――いや、高精彩画像で存在している彼女は、まるでアニメか、ゲームのキャラクターを思わせるコスチュームに身を包み、愉し気に髪を揺らしてカメラで、俺たちの昼食風景を観察していた。
「……ままぁ? 味に関するデータに興味があるんだけど、どうにかならない?」(……お、怖ろしい)




