じりじりと上昇銘柄 【Picture】
このオークの娘たちは身体を始終動かしていないと――散歩に連れて行けとうるさく吠える仔犬のような厄介さで、彼女らの運動不足解消も兼ねてギルドの仕事に向かわせることにした。
「……くれぐれもメルトゥイユや、ネルの話は出さないでくれよ?」
まぁウルリーカだけだと不安だったこともあったから、スキュデリに同行を頼んだ訳で……そこまでの心配は必要無いに違いない……多分。
「あ、そうだ?! あんたたち? これあげるから嵌めなさいな。そんでもって気を付けて行くのよ?」
いつの間にかデシレアに作らせていたらしい、龍と蛙が向かい合う意匠の指輪を2人に勧める。
俺の指に光る代物に比らべれば曰く「オモチャみたいな物」とのことだけど、限定的に似たような機能を持ち合わせているらしい。
「ど~せ、もう使われてない紋章でしょうし? そんじょそこらの紋章官程度に分かるようなものでもないハズよ? いっそアタシたちの群れを表わす旗印にしちゃいましょ♡」
そして見送る2人に、弁当やら飲み水を詰めた水袋などをアレコレ渡しながら、鬱陶しくなるほどの確認を繰り返す。
まるで遠足に我が子を送り出す朝の母親。
(コイツの……こういう家庭的な所は、ホント好きなんだけど)
そんなことをふと考えたら、顔を赤くして――少し怒った表情でネルはこちらを向いた。
「……こっ恥ずかしいこと……考えてんじゃないわよ」
照れ隠しの非難。
「最近……お前の株は、だだ下がりの……下げトレンド長かったし。持ち直し始めたってだけのことだろ」
「――では御屋形様よ。私もそろそろ、ひと仕事片付けに行ってくる」
 




