……適応しちゃたよ
突然の声に驚いて、麦わらでは無く、作業に用いていた薪割り台を叩いて大きな音。
冷やかしにやって来たネルは、出会った時に着ていた服は、こちらでの日常生活に不向きらしく(もっとも、あんなドレッシーな服が、どこであれ普段着に向くとは思えないけども)
今はドイツ・ビール関連の売り子の女性が着る様な服に着替えて、普段着としていた。
現世ではディアンドル? ……とか、言うらしい。
大きな胸が、これ見よがしに強調されて、これも……すこぶるエロい。
「……はぁ」自然と、ため息が口をつく。
「やっぱり……あちらでの生活が……いい?」
心配してくれているのか、側にやって来たネルは、俺を気遣うように
「なんだかな?」
「……うん」
静かに寄り添って、俺の話に耳を傾けてくれていた。
「……ここでの生活……もう……慣れちゃった……あんなに抵抗あったのに」
よほど予想外の言葉だったのか。一瞬、面食らった表情を見せたネルは、口元を隠して 可笑しそうに笑い声をあげる。
思うさま、楽し気な声をあげた後で──
「住めば都でしょ~♪ おまけに夜は、綺麗なつがいのお陰で、都どころか天国だもんねぇ~? うっらやましいィ♬」
背後から、俺の首に腕を廻して抱きつき、胸を押し付けて来る。背中に感じる、2つのぽっちりの感触がエロい(こ、この……おっぱいが! このおっぱいが、俺の人生を狂わせる!!)
しばらく、戯れ付いて満足したのか、ネルは絡ませた腕を解いて立ち上がると
「じゃ、それが終わったら、今日は畑で、お芋さんとタマネギさんとニンジンさん……あ、それとブドウさんを一房ずつ収穫して来て? 白と赤ね」
鼻歌を歌い、家の中に戻って行った。
* * *
ネルに頼まれた作物を収穫するため、大きな笊を傍に、畑に腰を下ろす。
ここで暮らすようになって──最初はこんな、どうと言うことも無さそうなことにさえ、驚かされた。




